栄養療法摂食障害を治療する栄養素
摂食障害の治療に必要な基本の栄養素は、下記の7種類です。症状に応じて、腸内環境を整える処方が必要な場合があります。
下記には、腸管免疫の改善を目的とした処方はグルタミンのみです。
亜鉛、カルシウム・マグネシウムの3つのミネラルは、主に低血糖症の改善を目的としています。
無月経や月経不順がある場合では、排卵誘発剤だけに頼る治療はお勧めできません。当院での詳細な生化学検査をお受けいただき、見合うだけの至適量の栄養素を補給して、自力で月経を再開できるような治療が最善です。
摂食障害の症状が強い場合、無月経や月経不順がある場合、嘔吐や下剤の乱用などがある場合は、クリニック・ハイジーアでの受診をお勧めします。
摂食障害が軽度の場合では、ご自身で食事療法を実践し、その上クリニック・ハイジーアのサプリメントを試してみても良いかもしれません。
ご自身で栄養療法と食事療法を実践されても、
「改善が足りない、またはスッキリしない」
「ストレスなどがかかると症状がぶり返す」
などの場合では、腸内環境の悪化が予測されるためクリニック・ハイジーアでの受診をお勧めします。
無月経が長い場合は、生殖機能に関与するビタミンAや、女性ホルモンのバランスを整えるビタミンEの至適量が必要です。拒食タイプでは、脳の機能低下の改善にEPA+DHAなどの不飽和脂肪酸の摂取や、必要に応じてアミノ酸の点滴が有効です。
1. たん白質
たん白質 |
処方量 / 日
体重1kgあたり1g
プロテインパウダーから10~30g
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働き |
- おもにLBM(脂肪以外/筋肉、血管、皮膚、臓器、骨など)の体を作る材料
- ホルモンや神経伝達物質、免疫物質などのホメオスターシスの材料
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ポイント |
- インスリンの分泌をしにくい=脂肪になりにくい
- LBMを増やし、代謝を上げる
- 自律神経を整え、満腹感が得られる
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たん白質は「カラダを創る材料」であり「カラダを動かす材料」でもあり、生命活動の基本的な材料なのです。そして、摂食障害の治癒にあたりもっとも大切な栄養素は、たん白質です。
摂食障害で低血糖症状やストレスが強い場合は、副腎皮質から分泌されるコルチゾールが体たん白をブドウ糖に変える働き(糖新生)があるため、通常の5~6倍のたん白質が消耗(異化)されます。
普通の食生活でも日本人の食生活ではたん白質が不足傾向にあり、とくに摂食障害の患者さまでは顕著です。
そのため詳細な血液検査を実施すると、摂食障害でお悩みの患者さまは、みなさん「強いたん白欠乏」を呈しています。
何度も繰り返すようですが、三大栄養素のたん白質・脂質・糖質で太る食べ物は「精製された糖質」です。分子量の小さな糖質が「太らせるホルモン」のインスリンをたくさん分泌させるためです。たん白質(とくに植物性)はインスリンを出しにくいため、基本的には太りません。
たん白質は、全身の60兆個の細胞の材料であり、細胞を動かすための主酵素であるため、積極的な補給が大切です。
十分なたん白質の補給をしないと、いつまでも「満腹感」や「幸せ感」が戻ってきません。たん白質をしっかり食べること加え、治癒のためにプロテインパウダーでの補給が必須です。
1日のたん白質の必要量 = その人の標準体重 × 1.14グラム
(プロテインスコアを100とした場合)
上記のとおり、健康維持のために、たん白質は体重が50kgの方ではおよそ50gのたん白質が毎日必要になります。治療のためにはより多くのたん白質が必要ですから、体重に関わらず毎日50gのたん白質の補給をめざしましょう。
たん白質は熱で破壊されるため、調理後のたん白質の量は、食品成分表に掲載される含有量の半分で計算しなくてはなりません。とすると毎日50gのたん白質を食事からの補給だけでまかなうのは実際には難しいため、必ずプロテインパウダーでの補給を加えてください。
毎日のお食事からおよそ10~20g分のたん白質を食べること、そしてクリニック・ハイジーアのプロテインパウダーを20~30gを加えて、トータルで50gを超えるように心がけましょう。
食 品 | 目安量 | 目安量あたりのたん白量 | たん白質50グラムを 摂取するには? |
肉(加熱調理) | 100グラム | 7~10g | およそ500グラム |
刺身(生魚) | 100グラム | 7~10g | およそ250グラム |
魚(加熱調理) | 100グラム | 7~10g | およそ500グラム |
全卵(加熱調理) | 1個(中サイズ) | 6.2g | およそ8個 |
豆腐 | 1/4丁(75g) | 4.9g | およそ4丁 |
納豆 | 1パック(50g) | 8.2g | およそ11パック |
牛乳 | コップ1杯(180ml) | 5.9g | およそ1,800ml |
チーズ | 一かけ(20g) | 4.5g | およそ15個 |
消化酵素が不足していたり(摂食障害の患者さまは、みなさん不足している)、動物性たん白質を過剰摂取すると、消化されなかったたん白質は悪玉菌のエサになり腸内環境を悪化させてしまうことがあります。
問題なのは、過剰なアミノ酸や不消化たん白を悪玉菌が分解し、腐敗した結果できるのが、アミノ酸代謝物の「窒素残留物」です。人体にとっては、非常に有害物質です。
代表的な窒素残留物は、スカトール、インドール、アミン、フェノール、硫化水素、アンモニアなどで、さらに強烈な発がん物質であるニトロソアミンを合成します。これらの有害物質は、腸から吸収され血液を汚します。
とくに動物性たん白質は、摂り過ぎると怖い栄養素でもあるため、たん白質の補給は納豆や豆腐などの植物性たん白を積極的に召し上がってください。目安は、動物性と植物性で半々くらいが良いでしょう。
とくに納豆は発酵の過程で、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼなどの消化酵素が作られるため、消化に負担がかからずにお薦めです。みなさんご存知のねばねば成分のナットウキナーゼは、納豆菌が作り出すたん白質分解酵素でもあり、血液をサラサラにして血流をアップする作用もあります。
たん白質を十分に摂取するということは、炭水化物が大好きな日本人にとって、実は結構たいへんです。
どうしても「カロリーのことが気になって、たん白質を食べるのが怖い!」と感じる場合は、クリニック・ハイジーアのプロテインパウダーを増やして補給してください。
食事に含まれるたん白質は10gにつき40kcalですが、プロテインパウダーは脂肪分をカットしているため10gにつきおよそ30kcalです。純粋なたん白質のみのカロリーで、余分な脂肪は含まれていませんので、安心して補給できます。
クリニック・ハイジーアのプロテイン
もっとも大切なたん白質ですが、胃腸の消化吸収機能が十分でない場合、分子量が大きいため負担がかかります。とくに摂食障害で飢餓状態があると、胃の消化酵素の材料もたん白質のため、十分な消化酵素が分泌できていない方がほとんどです。低血糖による交感神経緊張状態では消化機能も当然ながら低下しています。
そのため分子量の大きなプロテインは、治療には向きません。
よくスポーツジムに通っていたり運動を多くする男性が、プロテインの補給や食事で筋肉隆々な体格を維持しているのに、同じように運動を取り入れたりプロテインを補給しても、女性によっては全く筋肉にならず、脂肪すら減らない方もいらっしゃいます。(これは、たん白質の摂取量や吸収率だけでなく、インスリンの分泌量にも影響されます。)
男女差もありますが、同じようにたん白質を補給しても、胃の消化機能は個人差が大きく吸収できていないために起こります。
筋肉のしっかりついた健康的で美しい体は、胃の消化吸収に大きく左右されます。
実際に、女性の胃の消化能力を調べると、ペプシノーゲンⅠの低い方が大勢いらっしゃいます。(と申しますが、きちんと消化できる数値であることのほうが少数派です。)
分子量の大きいままのたん白質やプロテインパウダーを補給しても、消化ができないと吸収もできないため、そのまま排泄されてもったいないだけになります。
そのうえ、分子量の大きなプロテイン製品は、消化不良を起こし、お腹が張ってガスが貯まります。お腹が張るのは、胃と小腸で消化吸収できなかったたん白が大腸で悪玉菌の餌になり、ガスを発生させるためです。大腸内で異常発酵し悪玉菌を増やすと、便秘の原因にもなり、過剰な食欲が治まりません。
もっとも問題なのは、小腸のタイトジャンクション崩壊により、未消化の高分子のたん白質がトランスロケーションにより体内でアレルゲンとなると、過剰な免疫反応→視床下部の炎症→疲労や過剰な食欲を引き起こす原因となってしまうことです。
体に良いと補給したプロテインが、ときには体に負担をかけることになってしまいます。
クリニック・ハイジーアでは、おもに大豆由来のプロテインを扱っています。
大豆由来のプロテインパウダー |
・低分子加工(約10,000以下)
・プロテインスコア100
・開始たん白のメチオニンの添加
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非遺伝子組み換え大豆を原材料に、プロテインパウダーを低分子(ペプタイド)加工したアミノ酸スコア100の高品質な製品です。
通常のたん白質は分子量が200~800万ダルトンであるのに比べ、平均分子量が1万ダルトン以下(およそ5000)と小さくなっています。
そのため消化吸収に負担がかかりにくく、そして効率よく体内で使われます。
アミノ酸スコアが低いと、体内での利用効率が悪く、同化がスムーズに行えません。
低分子加工と共に、さらに大豆レシチンを噴霧しているため、水や牛乳に溶けやすくなっています。
「開始たん白」と呼ばれるメチオニンを十分に加えているため、たん白合成を速やかに助けます。
腹部に膨満感が起こる場合は、少量頻回での摂取をお勧めします。
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胃の消化機能は簡単には上がらないため、クリニック・ハイジーアでは「消化された状態」まで分子量を小さくカットした大豆由来のプロテインパウダーをお勧めしています。
プロテインパウダーは、余分なカロリーの心配がなく十分なたん白質の補給ができるため、摂食障害の治療やダイエット、体重の維持に非常に大切です。
低血糖症と過食の章でもご説明しましたが、別名「太らせるホルモン」とも呼ばれるインスリンがたくさん分泌されている限り、過食はおさまりません。また、カロリー制限などのダイエットをしても上手に痩せることはできません。十分で適切なたん白質の補給は血糖値を安定させるため、摂食障害の治療のみならず、心と体を健康にするダイエットの基本です。そして満腹中枢や摂食中枢の働きを正常にしてくれます。
たん白質はGI値が低い食べ物であるため、インスリンを過剰に分泌する心配がなく、太りません。
安心して、補給してください。
2. ビタミンB群
ビタミンB群 |
処方量 / 日
B1レベルで
150~225㎎
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働き |
- 体内の物質代謝を司る材料
- 摂取した栄養素を代謝(消費)して、エネルギー産生に必要な材料=「ダイエットビタミン」
- 中枢神経・末梢神経機能に必要な材料=「神経ビタミン」
- 皮膚粘膜を守る
- 免疫の正常化 など
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ポイント |
- 不足すると、疲労や肩こり、倦怠感、皮膚症状、自律神経失調症などが起こりやい
- 摂取した栄養素を代謝(消費)して、エネルギーを作る補酵素
- 脂肪を燃焼する
- 代謝を上げる
- 集中力や記憶力がアップする
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ビタミンB群は、「代謝ビタミン=ダイエットビタミン」や「神経ビタミン」と呼ばれます。
ビタミンB群が不足すると、摂取した栄養素をエネルギーに変換して消費できないため、すべての細胞がエネルギー不足を起こし細胞内飢餓状態になり疲れやすくなる半面、脂肪は蓄積されやすくなります。
詳しくは、どんどん燃やせ!エネルギー製造工場をお読みください。
ビタミンB群は、8種類あり、互いに協力し合って働くため、全ての必要量を満たしたコンプレックスとして服用することが大切です。(ビタミンB群は、それぞれが単独では働きません。)V.B様栄養素(イノシトール、ベタイン、L-カルニチン)
ビタミンB群を50㎎、食品から摂るには? |
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ビタミンB1 |
ビタミンB2 |
ナイアシン |
豚もも肉 | 約5,5kg | 約24.0kg | 約800g |
納豆(1パック50g) | 約1,400個 | 約178個 | 約90個 |
卵 | 約1,666個 | 約227個 | 約1,000個 |
豚レバー | 約14kg | 約1.3kg | 357g |
毎日わたしたちの60兆個のすべての細胞がミトコンドリアでエネルギーをつくるために、今までの従来の量以上のビタミンB群を要求していることが、分子生物学の発展により明らかにされています。
たとえば健康維持ではB1レベルで毎日150~225㎎が必要とされますが、ビタミンB群が豊富とされる豚肉でも換算すると5.5キログラム食べなくてはなりません。
そのうえビタミンB群は水溶性で熱に弱いため、調理後ではほとんどB群は失われますから、現代人のほとんどがビタミンB群の欠乏が隠れているとも指摘されています。
そのため、ビタミンB群は、健康維持のためにもサプリメントでの補給が大切です。
サプリメントであれば、ビタミンB1レベルで50㎎は2粒の補給で間に合います。
摂食障害の治療目的であるならば、ビタミンB1レベルでは毎日150~225㎎の補給が必要ですから、なおさらサプリメントでのB群の補給が必要です。
実際に摂食障害の患者さまでなくても、普通に食事をされている方でも、極端なB群の不足で脚気をおこしている方も少なくないことは、私たちにとっても驚きです。また、たとえ低体重で見た目は痩せていても(飲酒をしない方でも)、代謝性の脂肪肝を起こしている方もいらっしゃいます。強い飢餓状態が長期間継続し、ビタミンB群の欠乏があるのですから、当然の結果ともいえるでしょう。
水溶性のビタミンB群の必要量には個人差が大きく、数倍から数10倍、病態の治療には数100倍にもなります。
少量のビタミンB群の摂取でも、元気で快適に暮らせる方もいれば、常に疲労感を感じる方もいらっしゃいます。同じ人でも環境、食生活、体調、ストレス、腸内環境によっても必要量は増大します。
例えば、白いご飯や白いパン、デザートなどの甘い食べ物ばかりを食べている現代人は、ビタミンB群の需要はより多くなります。頭脳労働者では、神経伝達物質の材料であるビタミンB群をたくさん消費します。
摂食障害の治療にあたり全ての細胞の代謝を正常に戻すには、おおむね3カ月から6ヶ月の間は、表のとおり毎日B1レベルで150~225㎎が必要です。
その方に必要なビタミンB群の量は、本来ならば詳細な60項目の生化学検査から決めたいところですが、水溶性で過剰症の心配がないためご自身の体調に合わせて補給していただいても良いでしょう。
治療目的ともなるとB1レベルで150㎎以上の量が必要であり、お食事から補給することは不可能です。
副作用を出さずに十分な含有量を補給するには、生体内と同じ化学物質である必要があり、市販の誘導体と結合させたサプリメントはお勧めできません。
ビタミンB群は水溶性で蓄積性はないため、吸収後おおむね3時間ほどで代謝をうけて尿中に排泄されます。ビタミンB群を補給すると尿が黄色くなるのは、「吸収されていない」ためではなく体内に吸収されているためで心配ありません。
ビタミンB群の十分な補給は、代謝を上げ痩せやすくし、疲労感も無くなります。神経伝達物質の材料でもあり、自律神経の機能を整えます。
3. (ヘム)鉄
ヘム鉄 |
処方量 / 日
ヘム鉄として
30~45㎎
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働き |
- 酸素を運ぶ
- ミトコンドリアでのエネルギー産生(代謝を上げる)
- 神経伝達物質の材料
- コラーゲン合成 など
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ポイント |
- TCAサイクルを回すために必要な材料→不足すると、十分にエルギーが産生できないため、めまいや立ちくらみと云った症状だけでなく、無気力、うつ症状、イライラなどの精神症状、疲労感や倦怠感、代謝の低下、肥満、冷え症、脱毛などのさまざまな体調不良の原因に
- 月経量の減少、月経不順、無月経、機能性の不妊症など
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摂食障害をお持ちの患者さまでは、必ずといって良いほど、貧血や、貧血でなくても鉄欠乏性貧血で強い鉄欠乏を呈しています。
そして鉄の不足は、めまいや立ちくらみなどの症状だけでなく、無気力やイライラ感などの精神症状、疲労感や代謝の低下、冷え症、脱毛などの体調不良を招きます。また、摂食障害のさまざまな症状をより悪化させ、また月経不順や無月経の原因ともなります。
強い鉄欠乏と低血糖症の組み合わせは、より症状は重くなります。精神的な症状の発現に関与するため、自分の理性をコントロールすることはできません。
そのため、たん白質に包まれたヘム鉄の補給は、摂食障害の根本的な解決に必要不可欠です。
鉄は、エネルギー産生に必要なミネラルです。
細胞は主にブドウ糖を分解し、生きるためにエネルギーを生成しています。ATPは解糖系で2分子、TCA回路で2分子、電子伝達系で34分子が生成されます。もっとも効率よくエネルギーを生成する電子伝達系では、チトクローム系酵素=ヘム鉄含有酵素がないとエネルギーを作ることができません。そのため貧血や鉄不足の方では、疲れやすい、冷え症などの不定愁訴を伴います。
鉄分8mgを食品で取った場合の量とその平均吸収率 |
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豚レバー |
ホウレン草 |
納豆 |
さんま |
鉄分8mg | 62グラム | 400グラム (約2束) | 250グラム (納豆5パック) | 570グラム (さんま24匹分) |
平均吸収力 | 20% | 1.5% | 3% | 12% |
上記の表のように、鉄の補給には動物性のたん白質に包まれた食品(ヘム鉄)としての補給が効率の良い補給方法であることが一目瞭然です。ホウレン草や大豆などの植物性の鉄は、フィチン酸や食物繊維が多いため、鉄の吸収が阻害されます。お食事からの鉄の補給は、レバーなどの動物性食品がおすすめです。
貧血や鉄欠乏の程度によっては、食事からのみの補給では十分とは言えない場合が多く、サプリメントとしての鉄の補給が必要です。
鉄補給のためのサプリメントを選ぶには、注意が必要です。
鉄は、「鉄化合物」「非ヘム鉄」「ヘム鉄」の3種類がありますが、体に負担がなく安心して補給ができるのは、吸収率が高く、たん白質に包まれた「ヘム鉄」のみです。
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材料 |
吸収率 |
鉄化合物 | *食べ物ではない | 予測値2~10%(低い) |
非ヘム鉄 | 食べ物(植物性) | 1~6%(低い) |
ヘム鉄 | 食べ物(動物性) | 20~30%(高い) |
鉄化合物と呼ばれる鉄は、食物由来ではなく、過剰症のリスクや胃腸障害を引き起こします。ヒドロキシラジカルと呼ばれる悪玉活性酸素を増加させます。一般の保険診療の範囲内で処方される鉄も、同様の種類です。吸収が悪いために、便の色は黒い状態が続きます。
非ヘム鉄は、野菜や果物などの植物由来のため、副作用の心配はありませんが吸収率が悪いため貧血の改善には向きません。プルーンなどに含まれる硬いペクチン繊維は、他の鉄をくっつけて体外に排出させる作用があり、より貧血や鉄欠乏が悪化します。
ナゼ、鉄欠乏性貧血は起こるのでしょうか?
日本女性の二人に一人は貧血!!(国民栄養調査より)
摂食障害の症状などがなくても、十分に食事をしていると思っていても、有経の女性では鉄欠乏性貧血をお持ちの女性が増えています。
下記の通り、土壌の劣化などにより食物に含まれる鉄分が減少、加工精製食品の増加、そして調理器具の変化(鉄鍋を使わなくなった)などにより、昭和50年以降より鉄分の摂取量が急激に減少していると云われています。
野菜に含まれる栄養素の変化 |
栄養素 | 野菜 | 1950年 | 1963年 | 1980年 | 2005年 |
鉄分 | ほうれん草 | 13.3 | 3.3 | 3.7 | 2.0 |
にら | 19.0 | 2.1 | 0.6 | 0.7 |
春菊 | 9.0 | 3.5 | 1.0 | 1.7 |
わけぎ | 17.0 | 1.2 | 0.5 | 0.4 |
普通の食生活で、成人が1日に摂取する鉄の量は約10~15㎎ですが、体内に吸収される鉄の量は約1㎎、汗や尿、大便などから排泄される量が約1㎎で、入って来る量と出ていく量は均衡に保たれています。
有経の女性は、1回の月経で約60mlの出血があり、喪失する鉄量は20~30㎎です。1日にすると、およそ平均1㎎の鉄が失われることになります。男性の倍の量の鉄が毎日失われていることになります。
成長期には1年間に数センチも身長が伸びますが、身長が大きくなればより多くの血液が必要になります。そのため成人よりも多くの鉄の補給が必要です。そのような大切な時期に、極端なダイエットや偏食をすれば、鉄欠乏症はますます拍車がかかります。月経不順や無月経をおこしても、不思議でもありません。
摂食障害の改善には、治療レベルの鉄量をしっかり補充してください。
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の症状は多彩で、十分な酸素が全身に行き渡らないことにより起こる症状は、めまい以外にも、粘膜、皮膚障害、精神的な症状そして免疫の低下などがあります。
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◎一般症状
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全身症状、脳神経症状(中枢神経の機能低下)
全身倦怠感、頭痛、めまい、眠け、イライラ、耳なり、微熱、疲れやすい、食欲不振、集中力低下
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循環器系の代謝機能亢進
心悸亢進(動悸・息切れ)
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末梢血管の収縮(血流減少)
皮膚・粘膜の蒼白、温度変化に敏感(夏バテしやすく、冬の寒さに弱く、冷房病になりやすい)
- コラーゲン合成 など
◎他覚的症状
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皮膚・粘膜の蒼白
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血圧低下、頻脈、心雑音、浮腫、便秘、下痢、微熱、月経異常、スプーン状爪、咽喉頭異常感症、ハンター舌炎等
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4. ビタミンC
ビタミンC |
処方量 / 日
3000㎎以上
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働き |
- 抗酸化作用
- コラーゲン合成
- ステロイドホルモン合成
- 鉄の吸収を助ける
- 免疫力のアップ
- ストレスに強くなる など
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ポイント |
- 不足するとコラーゲン合成が不十分になり、しみ・しわ・タルミなどの肌の老化、卵巣機能の低下や性ホルモン合成低下などにより無月経や月経不順などが起こりやい
- 不足すると脂肪が燃焼しにくいため、慢性疲労や肥満の原因になる
- 摂食障害治療に大切なヘム鉄の吸収に必要
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ビタミンCは、動物の体にとってもっとも基本的なビタミンの一つです。かつては死に至る病気として恐れられていた「壊血病」も、ビタミンCの欠乏症であることが分かり、ビタミンCの重要性が認識されるようになりました。
わたしたちの体はたん白質で構成されますが、その1/3はコラーゲンです。ビタミンCは、コラーゲンの生成に必要不可欠であり、細胞の機能調節にも関与する、もっとも基本的なビタミンでもあります。
現代人は、体内でビタミンCを作ることができません。
人間は、進化の過程でビタミンCを作る能力を失ってしまいました。2500万年前の人類の祖先はビタミンCを体内で合成し、なんと毎日2~6gのビタミンCを作っていたと考えられています。
多くの動物は、毎日カラダの中でたくさんのビタミンCを作っています。(体重60kgの成人に換算して) |
ラット 11,900㎎
犬 4,900㎎
猫 2,400㎎
うさぎ 13,540㎎
人間は、食物から毎日およそ100㎎のビタミンCを摂っています。
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それに対し、ビタミンC合成能力を失った現代人のわたしたちは、毎日食事からたったの100㎎のビタミンCを補給しているにすぎません。人が健康を維持するには、ビタミンCは毎日2000㎎程度が必要ですから、現代人はビタミンCが不足しています。
ビタミンCを体内で合成できない動物は、人間とサルとモルモットだけです。
ビタミンCを作れるラットは、健康なラットで毎日約12gのビタミンCを体内で合成します。そして、激しい運動を1日中続けた場合では、同じ個体の健康なラットでも倍量の約20グラムのビタミンCを作り、ストレスや活性酸素から体を守っています。
ビタミンCを体内で合成できない野生のサルは、毎日果物から4g(50kgの体重に換算)のビタミンCを補給しています。
ビタミンCを体内で合成できない私たち人間も、ビタミンCを積極的に補給しなくてはなりません。
ビタミンC1,000㎎(=1g)を食品から摂るには? |
いちご 107個
ネーブルオレンジ 7.7個
キゥイフルーツ 15個
レモン 50個
ホウレン草 26.5束
キャベツ 2個
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上記のとおり、ビタミンCを食品から十分に(グラム単位で)補給することはできません。サプリメントとしての補給が大切です。
野菜に含まれる栄養素の変化 |
栄養素 | 野菜 | 1950年 | 1963年 | 1980年 | 2005年 |
ビタミンC | ほうれん草 | 150 | 100 | 65 | 35 |
カリフラワー | 80 | 50 | 65 | 81 |
小松菜 | 90 | 90 | 75 | 39 |
春菊 | 50 | 50 | 21 | 19 |
また、昔の野菜や果物に比べて、ビタミンCの含有量は減っています。ハウス栽培で育てられた野菜や、長持ちさせるために未熟のままで摘み取られた野菜には、十分なビタミンCが含まれていません。
輸送や保存、調理法でもビタミンCは失われます。たとえば、ホウレン草が店頭で売られる時にはビタミンCは38%失われ、その後過程でゆでると、さらに44%のビタミンCが失われてしまいます。
ビタミンCの1回あたりの摂取量は2,000㎎(=2g)までとしましょう。およそ70%の吸収率です。
5. 亜鉛
亜鉛 |
処方量 / 日
30~60㎎
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働き |
- 食欲コントロール
- インスリン分泌の主役
- 細胞分裂に必須の材料
- 脳機能の維持
- 生殖機能の維持 など
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ポイント |
- インスリンの合成を助け、インスリンの材料でもある
- 体内の多くの酵素の構成成分として多様に働く
- DNA合成に関与する酵素ポリメラーゼの補助因子である
- 不足すると、老化の促進、傷の治りが遅い、うつなどの精神症状、成長障害、糖代謝異常、ホルモンバランスの乱れ、不妊症などの原因となる
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亜鉛といえば細胞分裂!と、みなさんには馴染みのあるミネラルでしょう。亜鉛が不足すると細胞を新しく作ることができません。
その他には、たん白質、酵素、DNA、コラーゲンの合成にも必須のミネラルであり、体内の200もの酵素反応に亜鉛が関与しています。そのため亜鉛の不足は、さまざまな代謝異常の原因となります。
そして亜鉛は、インスリンの形成を助ける働きでありインスリンの材料でもあるため、摂食障害の治療に必要不可欠なミネラルです。
脳の機能維持にも必要で、銅:亜鉛比は9:10が望ましいとされますが、この値が逆転すると精神の興奮が起こりやすくなります。とくに低血糖症では副腎皮質ホルモンや副腎髄質ホルモンの過剰分泌により、亜鉛を尿中に排泄を促すため、強い亜鉛欠乏が多く見受けられます。
亜鉛が不足すると、免疫力の低下、インスリン分泌低下、テストステロン代謝異常、うつ病などの中枢神経機能低下、体内の酵素合成の低下など、ホメオスターシスが崩れ、全身状態に悪影響をきたします。
また統合失調症と診断されている場合では亜鉛を尿中に排泄してしまう体質をお持ちの方(ピロルリア)もいらっしゃいます。血液検査の結果をもとに銅の過剰や亜鉛の不足がある場合は、亜鉛とともにビタミンB6を処方が必要です。
亜鉛15㎎を食品から摂るためには? |
牡蠣(むき身) 11個
パルメザンチーズ 205g
スモークレバー
煮干し 104匹
ごま(乾燥 大さじ27杯
豚レバー 217g
たたみいわし 200g
松の実 250g
凍り豆腐 290g
カシューナッツ 300g
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6. カルシウムとマグネシウム
カルシウム |
処方量 / 日
食事からの摂取量に応じて
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働き |
- 骨や歯の材料
- 筋肉や神経の働き
- ホルモン分泌 など
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ポイント |
- 不足すると、自律神経失調症やその他の神経症状を招く
- インスリン抵抗性を招き、さらにビタミンDの働きも低下させる
- 血圧の調節作用など
- 骨の材料
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マグネシウム |
処方量 / 日
食事からの摂取量に応じて
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働き |
- 精神神経機能を助ける
- 血管や筋肉の働き
- 全身の代謝に関与
- エネルギーを作る補酵素 など
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ポイント |
- インスリン感受性を高める(=ダイエットに必要)
- 脳内の幸せ物質(ホルモン)であるセロトニンやGABAの補酵素であり、不安・うつ・不眠などを鎮める作用
- 不足すると、神経障害やこむら返り、だるい、冷え性、低体温、不整脈を起こす
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カルシウムとマグネシウムは、ブラザーミネラルと呼ばれ、体内ではセットで働きます。
そのため、カルシウムとマグネシウムは1:1の割合で補給するのが理想的です。
カルシウムとマグネシウムは「キーミネラル」と呼ばれ、その生理作用は骨の代謝だけでなく、浸透圧の調整、pHの調整、神経機能の発現、酵素の共同因子、有害金属の毒性抑制、筋肉の働き、血圧やホルモンの調整などホメオスターシスの維持に大きく関与しています。
体重60キログラムの体には、およそ2~3kgのカルシウムが存在します。99%は骨に蓄積され、残りの1%が血液や細胞の内外に存在します。細胞内にもわずかにカルシウムが存在しますが、細胞外と比べて1:10,000と非常に少量に保たれています。このように骨と血液、細胞内と細胞外でカルシウム量に大きな違いがあることが、ホメオスターシスに非常に大きな役割を担っているのです。
細胞内に必要以上にカルシウムが入り込んだり、細胞外に排泄ができないと、正常な細胞の生命の営みが滞ってしまうのです。
マグネシウムは生体内のエネルギー通貨であるATPを分解してエネルギーを作るATPアーゼやさまざまな酵素の補助因子として、代謝調節に大切なミネラルです。
過食嘔吐や下剤の乱用を日常的に繰り返すと、マグネシウムが不足します。マグネシウムが不足すると、代謝が低下し太りやすくなったり、浮腫みの原因になります。
マグネシウムはインスリン作用を増強し、ビタミンB6やナイアシンとともにインスリン分泌を促し、インスリン抵抗性を改善する働きもあります。つまり、脂肪の吸収を抑える作用、余分な水分の排泄作用があるため、ダイエット効果や浮腫みの改善にも大きく貢献するミネラルです。また、脳内の幸せ物質(ホルモン)であるセロトニンやGABAの生成に関与し、不安、うつ、不眠などを鎮めます。
低血糖症では、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛などのミネラルが副腎皮質ホルモンや副腎髄質ホルモンの過剰分泌により尿中への排泄量が増えるため、ミネラル全般の強い不足があります。
小魚や海産物を食べなくなった現代の日本人は、慢性的なカルシウム不足だとも云われています。
カルシウムの推奨量は、成人600~800㎎と定められていますが、国民栄養調査によるとこの数10年来600㎎を下回っています。
カルシウム600㎎を食品から摂取するには? |
牛乳 600cc
しらす干し 300g
焼のり 200g
プロセスチーズ 100g
わかめ(乾) 80g
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マグネシウムを600㎎を食品から摂取するには? |
きびなご調味干し 350g
煮干し 520匹
納豆 12パック
ほうれん草 4.8束
ひじき(乾) 95g
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7. グルタミン
グルタミン |
処方量 / 日
2000㎎~
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働き |
- 小腸粘膜の構成材料であり、主要なエネルギー源
- 免疫の補助機能
- 記憶力を高める など
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ポイント |
- グルタミンは、準必須アミノ酸
- 小腸からの栄養素の吸収(能動輸送)を促進する
- 小腸のタイトジャンクションの崩壊の改善(リーキーガッド症候群、内毒素の侵入の予防)
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グルタミンは、準必須アミノ酸のひとつであり、小腸粘膜細胞の構成材料であり、小腸の主要なエネルギー源です。具体的にみると、小腸ではグルタミン50~60%、ケトン体15~20%、ブドウ糖5~7%をエネルギー源として使用しています。
ショ糖(=精製された砂糖)の取り過ぎや抗生物質の安易な服用が小腸内にカンジタ菌(真菌)の繁殖を許し、小腸上皮細胞のタイトジャンクションの崩壊、つまりリーキーガッド症候群を招きます。
リーキーガッド症候群とは、小腸内の悪玉菌が出すアルカリ性物質により腸の粘膜が溶かされ、腸壁がただれて炎症を起こしている状態です。未消化で高分子のたん白質や、グラム陰性菌の体内への侵入を容易にし、過剰な食欲を引き起こします。
リーキーガッド症候群は、低血糖症状を悪化させるもっとも大きな原因ともいって良いでしょう。
グルタミンは、強いストレスや風邪の影響でも消耗します。肉や魚、卵などに多く含まれますが、加熱により変性するため、食事からの補給は難しく、サプリメントからの補給が必要です。
また、リーキーガッド症候群を呈する場合、未消化の動物性たん白のトランスロケーションが全身の炎症を引き起こすため、低血糖症をより悪化させてしまいます。
グルタミンは強いストレスや風邪などの影響を受けると消耗してしまいます。肉や魚、卵などに多く含まれますが、加熱により変性する為、食事からの摂取は難しく、サプリメントからの摂取が効果的です。
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