低血糖症が過食の原因

低血糖症と過食血糖値の調節

吸収されたブドウ糖は、その後体内ではどのように代謝され細胞に取り込まれていくのでしょうか?
血糖値は、いろいろな臓器が自律神経やホルモンを介して調節されています。
そして、血糖値はなるべくなだらかな流れがカラダにとっては都合がよいのです。
血糖値とは、血液中のブドウ糖値(=グルコース)をいいます。

ブドウ糖とは、私たちが食べた炭水化物の最小単位(=単糖)です。
その他の単糖、ガラクトースやマンノースなども小腸で吸収された後、肝臓でブドウ糖に変えられます。

ブドウ糖は、血液中で濃度の変化を受けながら、細胞に取り込まれてエネルギー(=ATP)として使われます。
十二指腸から吸収されたブドウ糖は、腸間膜静脈をとおり門脈からいったん肝臓にいきます。
肝臓で、(38~)50%のブドウ糖が取りこまれ、残りは心臓から動脈をとおして全身の細胞に運ばれていきます。
この時に、血液中のブドウ糖の値を感知して調節しているのがすい臓と脳の視床下部です。
このように血糖値の調整には、肝臓すい臓視床下部の3つの臓器が大きく関与しています。

肝臓による血糖調節

肝臓はインスリンに関係なくグルコースを取りこめる臓器の一つであり、血糖値を安定させるための大切な働きをしています。
食後など血糖値が高くなるとブドウ糖を取り込みグリコーゲンや脂肪、一部はアミノ酸の形で蓄えます。肝臓はブドウ糖をグリコーゲンに変える独自の無制限の酵素を作ることが可能で、高血糖を処理する大きな機械のような臓器とも云えるでしょう。
高血糖時のグリコーゲンの量は、肝臓全体の1割にもなるほどです。
眠っている時などの空腹時の血糖値が下がったときでは、肝臓がグリコーゲンをグルコースに戻す、またはアミノ酸や乳酸、ピルビン酸などのから糖新生をおこなって、血液中のブドウ糖を増やし血糖値をコントロールします。このように肝臓は血糖値の安定に大きく貢献しています。
飢餓状態でたん白やビタミン(とくにB6)の不足があると肝臓は酵素を十分につくれないため、血糖値の調節がスムーズにいきません。
そのため栄養欠損による肝機能低下では、容易に低血糖症を引き起こすことが理解できます。

すい臓による血糖調節

すい臓は「血糖値が高いか低いか」をつねに監視している、いわば「血糖値の見張り番」です。
すい臓からは、普段からある一定の量のインスリンが絶えず分泌されています。(基礎分泌)
血糖値が低い場合は、すい臓のα細胞から「グルカゴン」を分泌して血糖値を上げます。
グルカゴンは交感神経により促進され、肝臓でのグリコーゲンをブドウ糖に戻し、脂肪を分解することで血糖値を上昇させます。
その反対に血糖値が高いと、β細胞が反応してインスリンを分泌し血糖値を下げます。
そして、インスリンは体内で血糖値を下げる唯一のホルモンであり、血糖値の恒常性を保つうえでもっとも重要なホルモンです。
ランゲルハンス島のβ細胞から血中に分泌されたインスリンは、細胞膜の受容体(=レセプター)に作用し、ブドウ糖の細胞膜糖化性を高めることでブドウ糖の細胞内への取り込みを促し血糖値を下げます。
インスリンの受容体(=レセプター)は細胞膜に存在するたん白で、ひとつの細胞あたり40個から、脂肪細胞や肝細胞のように20~30万個もつものまであります。
受容体の数が多ければインスリンの効きもよくなります。
受容体の数は、運動により数が増え、ビタミンC内服で感度が上がります。
インスリンは血中に分泌され肝臓で50%が吸収分解され、残りの50%が血液中を循環します。
その半減期は、5分前後です。
たいていの臓器は、インスリンが働いてブドウ糖を取り込む仕組みになっています。
その一方でインスリンにまったく頼らずにブドウ糖を吸収する臓器があり、非依存型臓器である脳、神経、網膜、腎臓は血糖値が低下してもブドウ糖の供給を受け続ける仕組みがあり、飢餓状態でもそれらの臓器は守られています。
インスリン依存型臓器の筋肉や脂肪組織には高血糖を処理する仕組みが備わっていますが、インスリン非依存型臓器は大量の糖に対応できないため血管が拡張し傷つきます。
そのため糖尿病の合併症を引き起こす原因となります。
たとえば甘いものを食べてめまいのような症状を起こすのは、脳がインスリンにたよらずにブドウ糖を取り込み、大量の糖を代謝するため補酵素のビタミンB群を消費するためです。

視床下部による血糖調節

血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありませんが、血糖値を上昇させるホルモンは7つのホルモンがあります。

血糖値を上昇させる7つのホルモン
成長ホルモン GH 中性脂肪分解を促し遊離脂肪酸を上昇させ、脂肪酸からエネルギーを作る過程を促進。
肝臓の糖新生抑制、タンパク質分解抑制
副腎皮質刺激ホルモン ACTH 副腎皮質を刺激。コルチゾール分泌を促す。多少副腎髄質も刺激する。自らはコルチゾール、アドレナリン、ACTH放出因子によって抑制を受ける。
甲状腺ホルモン 肝臓からのグリコーゲン分解による糖新生を促進。
腸からのブドウ糖吸収を促進。タンパク分解作用、脂肪分解作用、糖分解作用によりATPを作る過程を促進。
グルカゴン 肝臓でのグリコーゲンからの糖新生を促進。脂肪分解作用。
カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン) 肝臓と筋のグリコーゲンを糖に変換。
交感神経のリセプターに作用し脂肪分解を促す。
コルチゾール タンパク質の分解を促進。肝臓における糖新生及びグリコーゲンの合成。脂肪分解の促進。

これらの血糖値を上昇させるホルモンのうち最も大切なのは副腎髄質から分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリン、副腎皮質ホルモンのコルチゾールです。
ノルアドレナリンからアドレナリンが作られ、個人差はありますがその比率は1:4です。
これらは末梢では交感神経伝達物質として作用するとともに脳内の神経伝達物質となり、おもに大脳辺縁系と自律神経を司る視床下部に作用します。
ノルアドレナリンは、前頭葉の神経伝達物質としての働きもしています。
視床下部からの命令をうけた交感神経は直接副腎髄質を刺激し分泌を促すと同時に、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)やコルチゾールによっても刺激され分泌されます。
脳内では、ドーパミンからノルアドレナリンが作られます。
低血糖やストレスなどでアドレナリンやノルアドレナリンの濃度が上昇すると、脳内では大脳辺縁系が興奮し、人格を司る前頭葉が麻痺するため感情興奮の抑制ができなくなり、いわゆる「キレる」のような症状や、「プチっ!とスイッチが入って大量に食べ物を食べる」などの症状などを引き起こします。
低血糖時の大脳皮質の機能低下では、なおさら症状は強く現れます。
交感神経刺激症状として、頭痛、動悸、発汗、吐き気、顔面蒼白、立ちくらみを起こす場合があります。
そして血糖値を上昇させるホルモンには、分泌時刻が決まっています。
これは、過食症状を引き起こす時間帯とも関係します。
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)や副腎皮質ホルモンは夜明けの午前4時から5時ころに分泌が始まり、午前7時から9時までが分泌のピーク、そして午後には分泌が終わります。
これにより、血糖値や体温が上昇します。
カテコールアミンは、日中活動期に上昇し、睡眠中に低下します。
成長ホルモンは夜中の1時ごろに分泌されるため、可能ならば11時前にはベッドに入るのが良いでしょう。
このような各ホルモンの分泌時刻から、午後の4時以降にはホルモンによる積極的な血糖値が維持されない時間帯があることが分かります。
低血糖症が午前よりも午後、とくに昼食後や夕刻に出やすいため、昼食と夕食の間に間食を取ることが大切です。
この間食の摂取で血糖値の低下を防ぎ、夕食後の過食を減らすことが可能です。