低血糖症が過食の原因

低血糖症と過食低血糖症の診断(5時間糖負荷検査)

低血糖症の確定診断には、5時間のブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test : OGTT)をおこないます。

OGTTは、空腹時に75gのブドウ糖(グルコース)が入った飲料を飲んで、十二指腸上部で吸収されたブドウ糖の濃度(血糖値)が血液の中でどのように変化するかを、5時間かけて9回の採血で調べます。(ブドウ糖の一部は、口腔内や胃からも吸収されます。)
同時に、すい臓から分泌されるインスリン値(IRI)や体温も調べます。

OGTTは、前日の晩から12時間以上の絶食が必要です。空腹の状態で来院していただき、ブドウ糖の飲料を飲む以外は検査中の5時間は飲まず食わずで9回の採血をおこなうため、患者さまにとっては楽な検査とはいえません。

一般の糖尿病の診断では、2時間かけて5回採血をおこないます。低血糖症の多くは、3時間から4時間後に血糖値が大きく低下するため、2時間の糖負荷検査では低血糖症かどうか確定診断ができません。
OGTTは、人工的に低血糖状態にするため、検査中に具合が悪くなってしまう場合もあります。そのため検査を途中で中断する場合や、その後数日のあいだ具合が悪くなることもあります。患者さまの体力がない場合では、糖負荷検査はあえておこないません。
OGTTは、保険がきかないため自費での検査になります。(5時間糖負荷検査は一般の病院ではおこなっていません。また、低血糖症という概念がないと正確な判断ができません。)

クリニック・ハイジーアでは、60項目以上の詳細な生化学検査をおこない栄養失調の程度や体内の代謝や機能の状態を把握し、5時間糖負荷検査と合わせて総合的に評価をしています。

低血糖症の診断基準
① 5時間のOGTTで絶食時の血糖値より50%mg/dl以上上昇しない
② 5時間のOGTTで絶食時の血糖値より20%mg/dl以上下降した
③ 5時間のOGTTの間にどの時点でも1時間に50mg/dl以上下降した
④ 5時間のOGTTで絶対値50mg/dl以下を記録した(65mg/dl以下は疑わしい)
⑤ 血糖値のカーブにかかわらずOGTT施工中に、めまい、頭痛、混乱、発汗、憂うつ等の症状があらわれた(以上、Drニューボルトによる)
⑥ 血糖値がなだらかな曲線を描いていても、インスリン値の変動が明らかである場合、その数値が実際の数値とは限らない
⑦ 血糖曲線が正常でも体温の上下が著しいときは採血の間に血糖値の変動が起きていると考えられる
⑧ 血糖値が正常でも曲線に小刻みな山がいくつもある場合、血糖値の急落および血糖値を上昇させるホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の動きがある
(以上マリヤ・クリニック院長 柏崎良子医師による)

■参考
※空腹時血糖は80~100mg/dlが適切
※正常では血糖値のピークは負荷後30~60分
※正常では血糖の最高値は160mg/dlを超えない
※波は一相性で、血糖の最低値は負荷後3~4時間後
※インスリン値が50μU/mlを超えた場合、インスリン過剰分泌と診断する

(柏崎良子著 『低血糖症と精神疾患治療の手引き』を参考に作成)

糖尿病の診断基準

<空腹時血糖値およびOGTT2時間値の判定基準(静脈血漿値)>
正常値 糖尿病域
空腹時値
75gOGTT2時間値
<110mg/dl
<140mg/dl
≧126mg/dl
≧200mg/dl
75gOGTTの判定 両者を満たすものを正常型とする いずれかを満たすものを糖尿病型とする
正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする

・正常型であっても、1時間値が180mg/dl以上の場合は180mg/dl未満のものに比べて糖尿病に悪化する危険が高いので境界型に準じた取り扱い(経過観察など)が必要である。
・糖尿病型に属する高血糖(空腹時血糖≧126mg/dl、75gOGTTの2時間値≧200mg/dl、随時血糖≧200mg/dlのいずれか)が、別の日におこなった検査で2回以上確認できれば、糖尿病と診断できる。ただ1回だけ随時血糖値≧200mg/dlを満たすものを糖尿病型とする。
・前項の高血糖が1回だけ認められたものは「糖尿病型」と判定する。
・1回目と2回目の検査は同じ方法でなくてもよい。
・1回目の判定が随時血糖でおこなわれた場合、2回目は他の検査方法をおこなうのが、また1回目の検査で126~139mg/dlの場合は、2回目はOGTTをおこなうのが望ましい。

1.正常曲線

血糖値は、ブドウ糖を飲んで30分~1時間後にもっとも上昇します。インスリンも血糖値が上昇を始めるとまもなく上昇し、その最高値はブドウ糖の最高値より手前になります。血糖値の下降とともにインスリンの分泌量も減少します。血糖値は3~4時間で空腹時に近い値に戻りますが、空腹時の80%以下にはなりません。血糖値の最高値は、空腹時血糖の1.5倍以上まで上昇しますが、160以上にはなりません。

2.反応性低血糖症カーブ

ブドウ糖摂取後の血糖値の上下の反応が大きい場合を、反応性低血糖症といいます。
反応性の低血糖症の特徴は、ブドウ糖の負荷後の血糖値が負荷後の1.5倍以上、そして最低値は負荷前の80%以下に低下します。

強い過食症状を呈する典型的なパターンです。血糖値の急激な上昇の後、インスリンの過剰分泌とともに急激な下降を呈します。血糖値の急激な下降時に、摂食中枢の刺激と、副腎からのアドレナリンやノルアドレナリンの分泌がおこり、その結果として「過剰な食欲」を感じます。
当院のOGTTの結果で、もっとも血糖値が低下したケースは26です。血糖値が50以下のような低値では生命の危機ですから、低血糖から脳を守るために「食べろ!」という命令が強烈に脳から発せられます。
このタイプの低血糖症では、適切な食間の補給食が過食症状に効を奏します。食事療法のページを参考にしてください。

3.無反応性低血糖症のカーブ

無反応性低血糖症では、ブドウ糖負荷後、空腹時の1.5倍以上に上昇するはずの血糖値が上昇せずに血糖曲線が平たんになります。ご覧のとおり血糖値は一見では平たんですが、実際には血糖値の上下を短時間で繰り返しています。そのたびに血糖値を上昇させるアドレナリンなどのホルモンが分泌され、つねに交感神経緊張が続くため、非常に強い疲労感やうつ症状を伴う場合が多く見受けられます。反応性低血糖症よりも重症の場合が多く、中には自殺観念をおこすこともまれではありません。

栄養欠乏で貧血や鉄欠乏があると、より症状は悪化します。速やかな栄養(高濃度のサプリメント)の補給と同時に、徹底的な食事療法が必要です。